コラム

【2024年確定申告データから見る】定額減税・インボイス・相続時精算課税の最新トレンドと実務への影響

こんにちは!税理士の長岡です。今回は、「令和6年度分の新制度が顕著にあらわれた申告」についての内容になります。最後までお読みいただけると幸いです。

はじめに:令和6年分(2024年)確定申告から見える「変化の兆し」

2024年(令和6年)分の所得税・消費税・贈与税の確定申告状況が、2025年5月30日に国税庁から発表されました。
今回の申告データには、最近の税制改正の影響が「数字」として鮮明に現れています。

本記事では、確定申告統計から読み取れる変化や実務上の留意点、これからの対応策についてわかりやすく解説します。


1.所得税:定額減税の影響で納税ゼロが大幅増加

■ 申告者数は微増だが、納税者数は激減

  • 所得税等の確定申告書提出者:2,338万9,000人(前年比0.6%増)
  • 納税額がある人:517万5,000人(前年比22.6%減)
  • 納税額がない人:468万1,000人(前年比53.5%増)

定額減税の影響により、多くの人が納税額「ゼロ」となったのが大きな要因です。

■ 譲渡所得(株・土地)も過去最高を更新

  • 株式等の譲渡所得:前年から42.7%増加
  • 土地等の譲渡所得:前年を上回り、いずれも過去最高水準

➡ 2023年の株高や不動産売買の活発化が背景。投資利益が増えた反面、納税への影響も拡大しています。


2.消費税:インボイス制度の影響が継続中

2023年10月から始まったインボイス制度は、2年目に突入。今回の確定申告にもその影響が色濃く現れました。

■ 主な数字

  • 申告件数:212万件(前年比7.5%増)
  • 納税額:8,004億円(前年比16.8%増)

➡ 消費税の納税義務が拡大し、個人事業主やフリーランスにも影響が波及しています。

■ インボイス発行事業者数:221万人

そのうち「2割特例(簡易課税のような制度)」を使った人は、約81万人と全体の約37%にのぼっています。


3.贈与税:相続時精算課税の利用が一気に拡大

令和6年の税制改正で、相続時精算課税制度の基礎控除が110万円まで拡充されたことを受け、利用者が急増しました。

■ 主な数字

  • 相続時精算課税の申告者数:7万8,000人(前年比59.2%増)
  • 暦年課税による申告者:前年比14.0%減

➡ 多くの納税者が、相続時精算課税にシフトしていることが明らかです。

■ 贈与税の申告納税額は3,935億円で過去最高

資産移転の時期や方法を再考する家庭が増えていることが背景にあります。


4.デジタル化の加速:e-Tax利用が主流に

  • e-Tax申告は全体の約75%(4人に3人)
  • その約半数がスマートフォンから申告

➡ 国税庁のUI改善やマイナンバーカード普及により、確定申告は誰でも・どこでもの時代に突入しています。


5.経営者・個人事業主が取るべき次のアクション

これらの数字が示す通り、税務環境は大きく変化しています。以下のような対応を早めに行うことが重要です。

✅ 所得税対策

  • 定額減税を正しく理解し、年末調整や確定申告でミスを防ぐ
  • 株式や不動産売却益がある場合は、譲渡時期の戦略的調整

✅ 消費税対策(インボイス)

  • 今後インボイス対応の厳格化が進む可能性あり
  • 「2割特例」活用のメリット・デメリットを精査
  • 免税事業者のままでよいか、今一度再評価

✅ 贈与・相続戦略の見直し

  • 相続時精算課税の活用により、早期の資産移転が有利になる場合あり
  • 不動産・非上場株式などの資産評価も含め、中長期的な贈与設計を

✅ デジタル化対応

  • 電子帳簿保存法、マイナポータル連携、e-Tax環境整備
  • 税理士・顧問会計士とのクラウド共有体制を整える

まとめ:税制改正は“制度”ではなく“数字”に表れる

今回の国税庁発表は、「制度改正が実務とどう結びついているか」を示すリアルなデータ集です。

あなたの会社や家庭も、すでにこの流れに巻き込まれています。
早めの情報キャッチと対応で、「知らなかった」を防ぎ、正しい判断と納税をしていきましょう。


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