法人設立時の役員任期は何年に設定すべきか?色々な事例を交えて!
〜株主構成・譲渡制限・事例を踏まえ経営者にヒントを提供〜
はじめに
会社設立時に多くの方が悩むポイントのひとつが「役員の任期」です。
定款に記載する任期は何年が妥当か?株主が何人いるかによって重要度が変わる?譲渡制限をつけると10年まで延長できる?
役員任期は一見地味ですが、実は会社運営に大きな影響を与える重要な項目です。任期の決め方次第で、手続きコストや経営の安定性、株主間トラブルのリスクが変わってきます。
この記事では、法人設立時に知っておくべき役員任期の基本と選び方、株主構成による重要性の違い、譲渡制限付き会社のメリット、実際の事例までを詳しく解説します。
役員任期の基本
会社法上、役員の任期は以下のように定められています。
- 公開会社(譲渡制限のない会社):取締役の任期は最長2年
- 非公開会社(譲渡制限ありの会社):取締役の任期は最長10年まで延長可能
つまり、定款で定めなければ原則は2年(監査役は4年)ですが、譲渡制限をつければ最大10年まで設定できます。
株主構成によって任期の重要度が変わる理由
株主が少ない(家族経営・小規模企業)の場合
- 家族経営や役員=株主という構成が多く、株主総会も形式的
- 長期任期にすることで登記・総会コストを削減できる
- 役員変更登記が10年間不要になり、実務負担が減る
株主が多い(外部出資者がいる会社)の場合
- 外部株主との利害調整が必要
- 任期が長すぎると経営陣をチェックしづらくなる
- 投資家が定期的に取締役を改選できる仕組みを重視するため、短めに設定することが多い
👉 任期は「経営の安定」と「ガバナンス強化」のバランスで決めることが大切です。
譲渡制限をつけると任期が10年まで延長できる
譲渡制限会社とは?
定款に「株式を譲渡する際には会社の承認が必要」と定める会社。
中小企業や家族経営会社のほとんどがこれに該当します。
メリット
- 役員任期を最長10年に設定できる
- 株式譲渡を制限し、外部への株主流出を防げる
- 会社のコントロールを維持しやすい
デメリット
- 株式流動性が低下する
- 将来的に上場を考える場合は解除が必要
任期設定のパターンとヒント
パターン1:家族経営・小規模会社
- 譲渡制限あり、役員=株主
- 任期:10年
- メリット:登記・総会コストが大幅削減
- デメリット:役員の変更が必要な場合、任期途中でも手続き必要
パターン2:複数株主+外部投資家あり
- 譲渡制限あり
- 任期:2〜4年程度
- メリット:経営陣の定期的な見直しが可能
- デメリット:登記コスト・手続きが増える
パターン3:上場を目指す会社
- 譲渡制限なし(公開会社)
- 任期:最長2年(監査役4年)
- メリット:投資家の信頼獲得
- デメリット:頻繁な改選手続きが必要
実際の事例
成功事例:任期10年でコスト削減
A社は家族3人で設立した飲食業。
譲渡制限あり・任期10年に設定し、役員変更登記コストを削減。
10年間役員変更が不要で、経営に集中できた。
失敗事例:任期が長すぎて株主との関係悪化
B社は外部投資家を入れて任期10年に設定。
経営陣が思うように成果を出せず、株主が経営陣を変えたくても任期が長く動かせない状況に。結果、追加投資が止まり資金繰りが悪化。
設立前に決めておくべきこと
- 株主構成(親族だけか、外部投資家がいるか)
- 将来の事業方針(上場を目指すか、非公開で続けるか)
- 任期満了ごとの役員改選の負担を許容できるか
- 株主間契約書で役員選任・解任のルールを明記
まとめ
- 役員任期は「定款」で定める。原則2年(監査役4年)だが、譲渡制限をつければ最長10年まで延長可能。
- 株主が少ない会社は長期任期にして実務コストを下げるのが有効。
- 外部株主がいる会社は短期任期でガバナンスを確保する方が望ましい。
- 任期設定は「経営の安定性」と「株主の監視・信頼性」のバランスで決めることが大切。
最後に
私はこれまで多くの経営者の会社設立に関わり、任期設定の重要性を痛感しています。
「とりあえず2年」「とりあえず10年」と決めるのではなく、株主構成・将来の資金調達・事業計画に応じて最適な任期を選ぶことが、会社の安定と成長につながります。
定款や株主間契約の整備は、経営の自由度を守り、トラブルを防ぐための最初の一歩です。会社を設立する前に、ぜひじっくり検討してください。
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芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。