財務
MQ会計を経営に導入する方法
〜メリット・デメリットを踏まえた実践ガイド〜
1. MQ会計とは?
MQ会計は、「利益 = 粗利(M) × 販売数量(Q)」の式を軸に、
売上や利益の動きをシンプルに把握する会計手法です。
- M(Margin)= 粗利益
売上から変動費を引いた額。1つ売るといくら利益が出るか。 - Q(Quantity)= 販売数量
何個(何件)売ったか。
つまり、
利益 = M(粗利) × Q(数量) − 固定費
この構造を数字で可視化することで、経営の意思決定が格段にしやすくなります。
2. MQ会計導入のステップ
ステップ1|売上と変動費を分ける
- 原価・仕入・外注費など、販売数量に比例して発生する費用を「変動費」として仕分け。
- 家賃や人件費など一定額かかる費用は「固定費」に分類。
ステップ2|粗利益(M)を算出する
- 売上 − 変動費 = 粗利益(M)。
- 1単位あたりの粗利益(M÷Q)も計算。
ステップ3|販売数量(Q)を正確に把握する
- 商品数、契約件数、サービス提供回数など、自社に合った単位を決めて計測。
ステップ4|MQ会計表を作成する
- 月次ごとに「M」「Q」「固定費」「利益」を一覧化。
- 売上や利益の変動要因が、MとQどちらによるものかを明確にする。
ステップ5|感度分析を行う
- 「Mを10%増やすと利益はいくら増えるか」
- 「Qを20%増やすと固定費を回収できるか」
- 数字のシミュレーションで経営判断を強化。
3. MQ会計のメリット
① 利益改善のポイントが一目でわかる
売上だけでなく、M(粗利)とQ(数量)のどちらを改善すべきかが明確になる。
② 価格戦略に活かせる
値下げや値上げが利益に与える影響を事前に試算できる。
③ 固定費の負担感が数字で見える
固定費をカバーするための必要売上・数量がすぐ計算できる。
④ 社員の数字意識が向上する
営業や製造の現場も「何個売れば利益が出るか」を理解しやすくなる。
⑤ 感覚経営から脱却できる
数字に基づいた戦略立案が可能になり、経営判断がスピードアップ。
4. MQ会計のデメリット
① 導入時のデータ整理が大変
変動費と固定費の分類を正確に行う必要がある。
② 数字の入力を継続しなければ意味がない
毎月の数字管理が習慣化できないと効果が薄れる。
③ 多品目・複雑な原価計算では手間がかかる
商品ごとにMとQを計算する必要があるため、原価管理の精度が求められる。
④ 社員教育が必要
数字に慣れていない社員には最初ハードルが高い。
5. MQ会計を成功させるコツ
- シンプルな商品分類から始める
いきなり全商品を細かく分析せず、主力商品からスタート。 - 毎月の定例会で共有
MとQの変化を社員全員で確認し、改善案を話し合う。 - 経理・会計ソフトを活用
Excelやクラウド会計で自動計算できる体制を整える。 - 感度分析を経営判断に組み込む
投資・値付け・販促を数字で検証。
6. まとめ
MQ会計は、数字をシンプルに見せる強力な経営ツールです。
導入すれば、利益改善の方向性が明確になり、戦略的な経営判断が可能になります。
ただし、導入時のデータ整理や継続的な数字管理が必須です。
「売上を何倍にすれば利益が2倍になるのか」「変動費をどれだけ削れば黒字化できるのか」——
その答えは、MQ会計の中にあります。
芦屋市で税理士をしています、ながさん(長岡昭宏)です。1987年生まれ。兵庫県西宮市で生まれ育ち、現在、芦屋市に在住。未来会計や資金繰りやバックオフィスのDX化などのお困りごとを中心に、経営者の伴走支援をしています。懇切丁寧に明るく元気にサポートいたします。