【令和7年税制改正】「特定親族特別控除」とは?大学生の子どもが扶養から外れにくくなる新制度をわかりやすく解説!
こんにちは!税理士の長岡です。今回は、令和7年税制改正の「特定親族特別控除」制度についての内容になります。最後までお読みいただけると幸いです。
はじめに:大学生の子がバイトを頑張ったら扶養から外れる?そんな不安に応える新制度
これまで、子どもが大学生になり、アルバイト収入が増えた結果、年収が103万円を超えてしまうと「扶養から外れてしまうのでは?」と心配する親御さんや経営者の方も多かったのではないでしょうか。
2025年(令和7年)の税制改正では、その不安に対応する形で「特定親族特別控除」が創設されました。
この新制度により、子どもがアルバイトで103万円を超えても、最大123万円までであれば一定の扶養控除が適用できるようになります。
1.「特定親族特別控除」とは?
■ 制度の目的
この控除は、大学生世代の子どもなどが、アルバイトなどで一定の収入を得た場合でも、扶養者(親)の税負担を軽減できるようにするためのものです。
従来:
- 扶養控除は、給与年収103万円以下が上限
改正後(令和7年12月1日施行):
- 所得が103万円を超えても、合計所得金額が123万円以下であれば控除対象に
2.いつから適用されるのか?
- 令和7年分(2025年)の所得税から適用
- 基本的には年末調整時に反映
- 令和8年分(2026年)からは月次の源泉徴収にも影響
このため、制度開始初年度と翌年以降で、給与計算上の取り扱いが異なってくる点に注意が必要です。
3.源泉徴収での取り扱い(令和8年以降)
令和8年1月以降に支払う給与からは、源泉徴収税額表(月額表)における「扶養親族等の数」に特定親族を含めるかどうかの判定が必要になります。
■ 扶養に含めるかの判断基準
合計所得金額 | 源泉徴収での扶養親族カウント | 年末調整での控除適用 |
---|---|---|
100万円以下 | カウントする | 控除対象になる |
100万円超~123万円以下 | カウントしない | 年末調整で控除適用 |
123万円超 | カウントしない | 控除対象外 |
つまり、「100万円超~123万円以下」の人は、月々の源泉徴収では扶養にカウントされないけれど、年末調整で控除を適用できるという運用になります。
4.実務上のポイントと注意点
給与計算・年末調整を担う経理担当者や顧問税理士にとって、今回の改正は控除の判定と源泉税計算に分かれる処理が求められる点で非常に重要です。
■ ポイント1:年末調整での再判定が前提
特定親族特別控除は、年末時点の所得額での判定が最終基準です。
途中で扶養親族にカウントしていなくても、年末調整で控除が適用されることがあります。
■ ポイント2:大学生アルバイトの扶養見直しがカギ
多くの家庭では、大学生の子どもが夏休みや冬休みに集中してバイトをし、年間収入が103万円を超えてしまうことがあります。
これまでは、その時点で親の扶養から外れてしまいましたが、新制度では123万円までなら一部控除の適用が可能です。
■ ポイント3:源泉税計算の対応漏れに注意!
令和8年1月以降は、給与ソフトや源泉徴収簿に「特定親族の所得金額別判定」が必要になります。
ソフトの更新や担当者の理解が不十分だと、源泉徴収額のミスや控除漏れが発生する可能性があります。
5.ケーススタディ:扶養控除の判定に迷ったときは?
ケース1:子どものバイト年収95万円
- 所得金額:約45万円(給与所得控除55万円)
- ➤ 源泉徴収でも扶養にカウント可。年末調整でも控除OK。
ケース2:子どものバイト年収110万円
- 所得金額:約55万円(控除55万円差引)
- ➤ 源泉徴収では扶養にカウントしない。年末調整で控除OK。
ケース3:子どものバイト年収130万円
- 所得金額:約75万円
- ➤ 控除対象外。扶養から完全に外れる。
6.経営者・担当者が今すぐすべき対応
- ✅ 給与計算・年末調整システムの対応状況を確認する
- ✅ 特定親族の収入確認フローを整備
- ✅ 従業員への案内文(扶養控除申告書の記載方法含む)を準備
- ✅ 税理士や社労士との打ち合わせで運用ルールを固める
まとめ:子どもの成長にあわせた税制度がスタート
今回の「特定親族特別控除」は、社会の実情に合わせた非常に実用的な制度改正です。
大学生がある程度の収入を得ることが一般的となっている今、こうした制度により、家庭の税負担の軽減と納税の公平性が両立される形となりました。
経営者や給与担当者としては、この制度の内容と実務上の取り扱いを正確に理解し、従業員に対してもわかりやすく説明できる準備を進めましょう。
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