「賃上げで得られる資金調達の裏技」——政策金融公庫の特例制度、あなたの会社も対象かも?
こんにちは!税理士の長岡です。今回は、賃上げ貸付利率特例制度についてご説明いたします。
売上が上がっても、人件費の増加でキャッシュが残らない…。
そんな悩みを抱える中小企業経営者にとって、“賃上げ”がリスクではなく“チャンス”になる制度があるのをご存知でしょうか?
それが 日本政策金融公庫の「賃上げ貸付利率特例制度」です。
「すでに借入している企業も対象」「新規創業後3ヵ月以上ならOK」など、実は意外とハードルが低いこの制度。
本記事では、制度の詳細と活用メリット、そして実際にどんな会社にフィットするかを、事例を交えてわかりやすく解説します。
賃上げ=資金繰り悪化? それ、もう古いかもしれません。
「人件費を上げるのは良いことだけど、資金が心配でできない」
「頑張って昇給したが、その後の運転資金が厳しくなった」
そんな声をよく耳にします。
でも、国の制度を味方につければ、その不安は軽減できる時代になりました。
この「賃上げ貸付利率特例制度」は、単なる“借入支援”ではありません。
「賃上げを頑張る会社を応援したい」という国の意思表示でもあります。
だからこそ、要件を満たす企業に対しては、最大2年間、金利を0.5%も下げてくれるという異例の措置が取られています。
そもそも「賃上げ貸付利率特例制度」って何?
制度の正式名称は「日本政策金融公庫 賃上げ貸付利率特例制度」。
簡単に言うと、「給与を2.5%以上アップする見込みがある企業に、低金利で資金を貸しますよ」という内容です。
対象となる企業は大きく2タイプあります。
種類 | 対象者 | 利率特例内容 |
---|---|---|
中小企業事業 | 雇用者給与が前期比で2.5%以上増加予定、またはすでに増加している企業 | 通常の貸付金利から0.5%引き(2年間) |
国民生活事業 | 創業3ヵ月以上の小規模事業者で、給与が2.5%以上増加見込み | 同上 |
※「雇用者」には、パート・アルバイトも含まれますが、役員や家族従業員は含まれません。
制度の“本当の価値”は、コスト削減だけじゃない
この制度を活用すれば、単に「金利が下がってラッキー」では終わりません。
それ以上に大きいのが、“給与改善”という施策に対して金融機関からの信頼を得られる”ということ。
さらに、
- 採用活動時に「給与をしっかり上げている企業」としてアピール
- 社員の定着率アップと満足度向上
- 経営計画の明確化(制度申請に計画書が必要)
といった“見えない副産物”もついてきます。
例えばこんな企業が、制度を活かせる
■Case1:飲食店経営者(創業2年目・社員4名・バイト3名)
毎年少しずつ給与ベースを上げてきたが、次のステージに進むために本格的な昇給を検討。 →賃上げ分の一部をこの制度でまかなうことで、手元資金を守りながら給与改善に踏み出せた。
■Case2:製造業(社員15名・地方都市)
近年、新卒採用の競争が激化。給与での差別化を進めたいが、先立つ資金が課題だった。 →金融機関からこの制度の提案を受け、金利優遇を受けつつ計画的なベースアップに成功。
実際に使うには?——申し込みのステップ
- 給与支給額の比較資料を用意 →前期との比較が必要(ExcelでもOK)
- 借入申請の準備 →創業計画書や経営改善計画書が必要になる場合も
- 日本政策金融公庫へ申し込み →既存の融資に追加も可能。新規もOK。
- 認定支援機関のサポートも活用 →書類作成が不安な場合は、プロに任せるのが安心!
こんな誤解にご注意!
- 「うちはすでに借入中だから使えない」→ 既存融資があってもOK!追加で活用可能です
- 「役員報酬を上げたら使える?」→ 役員や家族従業員は対象外です
- 「条件が厳しそう…」→ “見込み”でもOK!計画的な賃上げで申請可能です
賃上げは、投資です。
日本全体が「物価上昇」と「賃金改善」の両立を目指す中、
中小企業がその流れに乗ることは、単なるコスト増ではなく、“未来への“攻めの一手”になります。
本制度は、その一歩を後押ししてくれる強力なサポート。
「金利優遇」と「信頼獲得」という2つのメリットを味方に、
これからの人材戦略と資金繰りを賢く進めていきましょう。
【まとめ】
- 賃上げを予定している、あるいは実施した中小企業は特例制度の対象
- 金利は最大0.5%引き、適用は2年間(下限0.3%)
- 既存借入への追加利用、新規創業者も対象
- 認定支援機関のサポートを活用してスムーズな申請を!